11時00分
朝は8時に全員がエントランスに集合し、バスに乗る。
行った先は東福寺であった。
そこは木々が紅葉し、降り注ぐ太陽の日に透かされた葉が、赤金色を燃え上がらせ、幻想的な趣をしていた。
しかし、亮の沈んだ気持ちの最底には、深海の様な暗闇が広がり、光は潰えていた。
あれから、自室に帰ったのは、西村と山田が引き上げ、有紀が寝た後の朝方の5時であった。
まるで記憶は、数日前の出来事である様な錯覚すら覚える。
己の前で起こった事象に、現実だと受け止め難い思いが亮の胸につっかえていた。
昨日まで確かにあった「翠 有紀―YUKI」、のピュアな憧憬はすでに残滓とあった。
メディアに作り上げられたイメージに、踊らされていただけだと思うといたたまれなくなる。
あるいは…。
彼女の素顔をそのまま、受け止めてしまえば、楽なのか!とも考えてみた。
亮達はグループごとに分かれ、境内を巡っている。
そこには、有紀の姿もあり、外見は昨日と何も変わりはなかった。
ただ、僕が彼女を見る目だけが、紅葉してしまったのだろうか。
夏服のブラウスが有紀を涼しく魅せる。
深夜の彼女の部屋で、そのブラウスの下に実った果実が、揺れていた様が目に焼きついていた。
彼女が歩くと、臀部に押し上げられたプリーツが左右に揺れる。
この張った尻に他の男の抽送を受けていたのか、とも浮かんだ。
もしかしたら、亮が求めても彼女の花は咲くのだろうか。
亮の下腹部に垂れるオスの証が僅かに疼いた。
集団で行動しながらも、有紀が周りとの距離ができ、一人に近い上状態になった時、亮は耳打ちする様に聞いた。
「翠さんは、西村と付き合っているの?」
すると、突然の言葉に彼女は目を白黒させながらも、亮の言いたい事が分かったらしい。
「あ、ごめん!昨日うるさかった?樋山君、隣だもんね!」
そう、詫びる表情を有紀は見せた。
「でも、彼氏じゃないよ。ウチ、男女交際禁止だから。」
有紀は周りを気にする素振りをし、
「確かに、昨日(今日)の晩は、ツキアッテ(突き合って)ましたけど…。あはは…。燃えちゃった。」
彼女の微笑んだ、表情が亮の中に焼きついた。
有紀を見つめる亮の視線に彼の密かな想いを感じたのだろうか。
「でも、樋山くんは、モテそうだから、いい人がいると思うの。何て言うか、私、モテなさそうな人を見ると、母性がくすぐられるのよね。可愛く見えちゃう!」
それは、暗に、亮に対しては、異性として、何も感じないのだ!と言っているに等しかった。
そう言い残し、有紀はグループに合流し、亮から離れていった。
亮は彼女は同じグループである故、互いに近くにいながらも、しかし、言葉を交わす事はなかった。
完。