〜捨て身の勝利へ〜



鬼塚が優理に追いつき、女の腰に手を回し、持ち上げたのだ。
「こんどは、絶対逃げられないように、荒業でいくぞ!!」
男は優理の身体を頭より上に高々と掲げた。
(実況)―これは!!これは、パイルドライバーだあぁぁ!!このまま、マットに森下優理を叩きつける気か!?女性のか弱い身体に容赦なしとは、チョコボール鬼塚!!鬼を宿す男だぁぁーー!!―
鬼塚の技が炸裂する瞬間を会場中が息を飲み見守る。
ワンテンポ置いて、優理の上体を背中からマットに叩きつけようとした刹那、けたたましい音がベリベリベリベリ!!!と響き渡った。
不運にも、優理の着衣に備わったマジックテープが脆く剥がれ切れてしまったのだ。
先ほどは発汗が優理の幸運に加担したが、今度は一転、剥がれかけていたマジックテープに汗と激しい回転が剥落へ加担し、なおかつ、鬼塚が優理の腰を掴んだ事が着衣に物理的な無理な力を与える結果となってしまった。
予想だにしないアクシデントに会場も”ああッ”と口を開け、時が止まった錯覚を覚えた。
コスチュームの圧が解け、優理の身体はまるでさなぎが脱皮を図るように着衣から中身だけがスルリと滑り落ちた。
まさに急転直下であった。
優理は首から背中にかけて、マットに叩きつけられ、垂直に伸びた全裸体は両脚を揃えながら、左ヒップから墜落した。
青いマットの海に綺麗に弧を描く真っ裸の女性が横たわった。
それをチャンスと見て、一台のカメラが女の臀部の狭間を覗き込もうと、優理の下肢に回った。
会場が女の形を見届けんと、スクリーンに視線を投げた時、映ったのは、間髪早く、両脚をたたみ、秘部を隠しながら立ち上がる女であった。
優理の足取りはもつれ気味で、頭を打った故か、ふらつき定まらなかった。
「お願い!それを返して!!」
よたよたと、優理は手を伸ばし、衣装を取ろうとした。
しかし、鬼塚はあろう事か、そのコスチュームを観客席中段辺りに投げたのだった。
ざわめいた歓声に見送られながら、女の裸体を隠す術は照明の明りの中を舞い、雑踏渦巻く、人ごみの中へ消えていった。
「ファンサービスだ!コスチュームくらいあげちゃいな!」
「そん・・・な・・・。」
弱々しい声を漂わせ、憔悴した表情の優理は全身のふらつきを制御できずにヨタヨタ鬼塚から距離を取るので一杯であった。
男は優理を見て一つ頷いた。
アクシデントで段取りは狂ったが、同じ結果を得れた事にある種の安堵があった。
「風呂に入るわけでもないのに、裸だとは!惨めな格好だなぁ!!」
そう言いながら、男は自身のパンツに手をかけ下ろした。
「フェアに試合するために、こっちも脱がないと不公平だろ?」
男は立派に怒張した男をさらけ出した。
(実況)―これは、期待していいんでしょうか!?我々が想像するあれがこれから始まるという宣言と捕らえてよろしいのか!―
それを聞きながら、優理の表情は今にも泣きそうなくらい歪んだのだ。
(実況)―今、目の当たりにしている鬼塚の姿は、仕事の都合上、正装といえるのではないのか!?つまり、本領の発揮はこれからなのか!!―
実況が掻き消されるほどに会場の歓声は張り裂けていた。
優理は勝つも負けるも最後の時が来た事を嫌がおうにも悟った。
疲弊した身体にムチを打ち、執拗に絡みつくカメラの視線を払いながら、乳房には手を覆い、残りの手は前の草叢と双臀の隙間を交互に遮りながら、己の大事を包み隠し通していた。
(実況)―獲物はふらふらだ!!守るだけで精一杯だ!!チョコボール鬼塚、勝利を我々に見せてくれるか!?―
実況の煽りに乗り、”開け”、”犯せ”“入れろ”と謳う会場の合唱も次第に隆盛を極めた。
会場のコールが後押しになる。
男はまるで英優にでもなった気分に浸り、表情は酔っていた。
「そうだろう!?か弱い女なんて、ちょっとした衝撃でも頭が朦朧として自由が利かなくなるだろう?素直に犯されていれば、そのまま気持ち良くなれたものを・・・!!」
そうして優理の足取りが“彼女の演技”とも気付かずに、同じように千鳥足を真似てみせた。
実は落下の体勢が良く、優理は無事、受身をとったに近い形になったのだ。
女の思考は、”朦朧と装っていれば、勝機が巡ってくるのではないか?”と、したたかに考え、その一縷の望みにかけた作戦が的中した結果となった。
そうして、男の脚が一番体勢不安定な瞬間を狙い澄まし、優理は全身全霊をかけ男の腹に渾身のタックルを放った。
周りの熱気を帯びた歓声が悲鳴に変わった。
「うぐぐっ!!」
不意を突かれた男の身体は、踵を浮かせるように後ろへ倒れこみ、マットの上に仰向けに転がった。
天井から降る照明が男の前面を照らす。
その衝突した勢いを借り、優理は鬼塚の上に覆い被さりフォールの体勢を取った。
優理の身体はちょうど、鬼塚を跨ぎながら、マットに両膝を下ろし、両手は彼の肩を強くマットに押し着けた。
今まで秘部や大事を隠していた手は全てが解かれ、女の肉体はありのままが曝け出されている。
「背に腹は変えられないわ!」
優理が力強く言った。
このフォールが決まれば、即勝ちなのだ。


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