場所はフランスの片田舎。
緑に囲まれ、清流の流れる地域に近所でも評判の娘がいた。
名をセイラと言い、青い瞳に、ブラウンのロングヘアをくくる赤いリボンが印象的な愛くるしい16歳の娘であった。
母親は玄関の前で時計を気にしてセイラを待っていた。
「まったく!いつものんびり屋さんなんだから!」
娘が朝の水汲みへ出て行ったきり、娘が戻ってこないのだ。
普通なら往復20分もあれば、十分なのだが、もう一時間も経つ。
思い返せば、セイラは子供の頃からいつもマイペースで周囲を呆れさせる事もしばしばであった。
幼い頃に父親を亡くし、強く叱る者がいないからではとも考えた。
あるいは、年頃になれば、自然と大人の女性として変わってくれるのではないかと、期待もしたが、その気配は微塵もない。
お隣の同年のお譲さんなどは、彼氏ができ、それを機に娘がよくなったと聞くが、いまだにセイラには浮いた話の一つもなく、メルヘンチックな空気を背負ったままに見える。
「まあ、言う事だけは、素直に聞いてくれるのが、自慢なのだけど…!」
母親がもう一度複雑なため息をついた時、湖へ続く小高い丘の向こうから桶を抱えた人影が見えた。
白いキャミソールの上着にジーンズのホットパンツの姿がゆっくりと歩いてくる。
セイラであった。
「昨日、お母さんとどんな約束したか覚えてる?」
セイラが玄関に辿り着くや、母親は急かすような口吻で言う。
「約束?」
「そう!」
「う〜ん…。」
しかし、セイラの視線は宙に答えを求めるようにボンヤリと彷徨うばかりであった。
「おばあちゃんの家にお見舞いに行くって、お話したわよね!?」
すると、セイラは針で突かれたようにハッとなり、両手で口元を覆ったのだ。
「そうだわ!私すっかり忘れていたわ!」
母親はまた大きなため息をついた。
手提げの籠に入ったお菓子と葡萄酒。
セイラは母親から祖母へのお見舞いの品を託った。
おばあちゃんは、数日前から腰を悪くして起き上がれなくなってしまったとの事だった。
優しいセイラはそう聞くと、「何事もなければよいけど…。」と言い、おばあちゃんの身を心配して眉を歪めた。
母親はそのセイラにもう一つよく言って聞かせたのだ。
「寄り道ばかりしないのよ。」
セイラは頷いた。
「心配しなくても大丈夫よ!」と、言うと、差し出された母親の小指と指きりして家を出た。
祖母の家は、セイラの自宅から半里はなれた森の中にある。
セイラが出発して一つ隣の町を超えたところだった。
森の入口に差し掛かると、大きな体躯をした男性が道端の茂みからひょっこり出てきた。
短髪に四角い顔、そしてガッシリした顎に黒々とした不精髭を蓄えていた。
ちょうど最近、近所で濃い髭を生やし、通称「狼」と呼ばれる不審者の目撃が相次いでた。
道行く若き乙女に声をかけては、乱暴を働こうとするのだ。
しかし、セイラの家は町一つ隔てる為、そういった情報が行き渡っていなかった。
男の姿を見ても逃げる素振りも警戒も見せない女を見て、男の眼尻が下がった。
「やあ、こんにちは。」
男は言った。
「こんにちは。」
セイラは目一杯の笑顔で返した。
「これから、どちらへ行くんだい?」
「おばあちゃんのところへお見舞いに行くのよ。」
「へ〜…。」
男は感心したように大きく頷いた。
「腕にかけている籠には何が入っているんだい?」
「お菓子に、ぶどう酒。見舞いの品なの!」
「そうかいそうかい。大変だねェ…。それで、おばあさんのお家はどこにあるの?」
「そうねェ…。これからまた、八、九町(ちょう)も歩いてくの。森の奥で、大きなかしの木が、三本立っている横の家よ。」
セイラは、こう教えた。
すると、男は考えた。
(若く、柔らかそうな小娘。こいつは擦れてなくて楽しめそうだ。ばあさまよりは、ずっと良かろう。)
男は下腹部がズキリと疼いた。
あどけない表情に不釣り合いに熟した肉体はまさに襲ってくれと言わんばかりである。
キャミソールの薄地を下から突き上げる無防備な胸の隆起。
腰のくびれも相まって、より豊かに見えるではないか。
男はセイラと何気ない話をしながら、彼女の下半身へと目を這わせた。
ホットパンツから伸びた両脚は細めでありながら、肉付きの加減で緩急を心得た線を持っている。
「あら?どうしたの?」
身体をジロジロと見る男に首を傾げ、セイラは問うた。
「い…いや。」
男は一つ咳払いをした。
「この先には悪い奴もいるから、この僕が途中まで送っていってあげるよ!」
そう言うと、セイラはたいそう喜んだ。
「ちょうど、お話する相手がいなくて寂しかったところなの!」
彼女がお辞儀をすると、ブラウンの髪が風にそよいでふわりと良い、まるで遠い花畑のキラキラとした花と蜜を掛け合わせたような甘い匂いがした。
「私はセイラ。あなたは?」
「お…おいらかい?おいらは、ブルートさ!」
「そう、あなたみたいな身体の大きな人と一緒だったら、きっと悪い人も逃げてゆくわね!」
男の象徴がズボンの内でムクムクと育ちつつあった。