〜裏切り者の結末〜



どれほど眠ったのだろうか。
裕子は目を覚ました。
時計に目をやると時刻は午前10時刻を少し回ったところだ。
「やだ…!寝過ごしたのかしら…。」
バスは酷く荒れた道を走っている。
アスファルトの舗装はされておらず、周りを覆い茂る木々はどんよりと裕子の視界を圧迫している。
「何処だろう…。」
バスは中心街に向かい、新幹線の駅へと辿り着くルートのはずなのだ。
街のざわつく騒音とはかけ離れた樹海の中の細道をヨタヨタと走行していた。
乗り間違えたのか?
いや。海岸線からでる路線は一本きりだからそれは有り得ない。
席から立ち上がり運転席に詰め寄った。
「すいません!○○駅前は経由しますよね。」
行きしなには見られない景色に困惑気味に尋ねる。
「……。」
運転手から返事がない。
無言でハンドルを握り裕子の言葉に耳を傾けようともしない。
「すいません!聞こえてます?」
「……。」
またしても、しかとを決め込む態度に裕子も憤慨気味に声を張り上げる。
(なんて、態度の悪い運転手なの?)
「すいません!○○駅前は…。」
そのとき運転手が口を開いた。
「目的地にそのような名前の停留所はありませんが。」
裕子に困惑が募る。
「どこに向かってます?」
「そうですね…。簡単に言えばお薦めの陵辱スポットですかね。マニアの間では有名でねぇ。人気が高いのです。」
「…ねぇ、ちょっと何言ってるの?」
その時、裕子は運転手の出で立ちに見覚えがある事に気付く。
制服越しではあるが、この筋肉質の男に裕子は会っている。
帽子を芸能人のように深々と被っていた為、今までわからなかった。
すると、バスは減速しだし、そして停車した。
運転手が帽子を脱ぎ捨てて裕子の方に振り向いた。
「き…木場!」
ニタリと気味悪く微笑むその顔に再び嫌悪する。
「何で?」
状況が飲み込めず、狼狽える女に運転席を立ち上がり詰め寄る。
「君が今夏、32人目獲物に選ばれたのさ。」
裕子は後ずさりながら窓外を見回した。
細道を抜け僅かに開けた場所に古びた洋館が佇んでおり、バスはその前に止められている。それを取り囲むように広がる樹海。
辺りを見回せど人一人見受けられない静寂の中から何十という人の息吹きと視線を感じていた。
「約束は果たしたはずよ!」
「いや、別の依頼だ。クライアントは君を指定してきた。身に覚えがあるだろう?君もよくしっている女性達からの依頼だ。」
裕子の顔がみるみる血の気を失ってゆく。
男な淡々と説明を続けていく。
「ようこそ!レイプ洋館へ!この館の中には何十という男が君の操を狙っている。見事逃げ切ったらこのゲームは君の勝ちだ。」
木場が裕子の腕を掴んで強引に引き寄せる。
「いっ…痛い!」
結った後ろ髪の隙間からウナジが覗けて艶やかに女を彩る。
木場は首筋に鼻を近付けて女の香りを吸い込んだ。
甘く男の本能を誘う情気がペニスの怒張を煽る。
「う〜ん…。」
「エロティックだねぇ、そのお尻。」
木場の視線が裕子の身体を這い回る。
中・高校と陸上をやっていた下半身は無駄な肉などないシャープなシルエットをまとう。ヒップは張りに満ち、豊かな双臀は天に反り上がっていた。
その狭間に肉茎を差し込んだ時、女の証と男の証がどんな会話を繰り広げるか、想像に胸を躍らせた。
「やめて…!その目で見ないで。」
裕子は顔を伏せ嫌悪を示す。
嫌がる女を尻目に、二の腕を掴む木場の指先が伸び裕子の横乳にぷにゅっ…と、沈み込んだ。
「ひひぃぃぃ!」
女の表情が羞恥に強張る。
「Bカップでも、大きめだなぁ。」
「やらしい!」
裕子は両手で胸を覆い隠し、身を縮める。
「そんな小さな事で赤面していたらこのゲームはクリアできないぜ!」
そう言いながら木場がバスの昇降扉のオープンスイッチを押した。
扉が開く。
そのまま女を連れて洋館の扉前まで引きずっていく。
「いやっ!放して!」
門扉から館の入り口まで湿っぽくコケの生えた石畳が並ぶ。
寂れた木造の2階建て。
数カ所ある窓はすべて閉じられており、完全にカーテンに遮られた室内は外から垣間見ることはできなかった。
晴れた昼間なのにやけに湿っぽく暗い。
陰気な佇まいに気が滅入りそうになる。入り口がガチャリと音をたてて
開きかれ、木場の視線が裕子に向く。さぁ、この館の中からの鍵を見つけ出し、
裏口から脱出できるかな?そう言い終わると、裕子を建物の中へ突き入れた。
「きゃっ…!」
よろめき、バランスを崩してロビーに倒れ込んだ。
裕子の手が、一縷の望みにすがり、木場の足にしがみ付いた。
女の掌から生えた様に、ズボンにシワが走っていた。
男の目が裕子を哀れむ色を投げていた。
「あの時、お前は背後の一瞬を錯誤していたが、オレの角度からは、はっきりと見て取れた…。彼女達はお前も共に走りぬけたと信じていたふうであったのは確かだ。しかし、お前は、さも、二人が振り返ったかの様に錯覚し、裏切られたかの様に思い込んだのだろうが、それは違う。」
裕子は、最後に何か言いたそうに、唇を動かしていたが、木場をそれを汲み上げようとはしなかった。
「では、幸運を…。」
ニタリ!と、サメは薄笑いを浮かべながら、扉は重たい音と共に閉ざされた。
深海の様に深く暗い洋館の中で、女のすすり泣く後悔と陵辱の悲鳴が響き続けた。


完。



                                                                     
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