〜カタイ女〜

翌日も快晴であった。
青い空に白い雲がまばらに泳いでい、燦々とした陽射しが心地よく暑い。
朝の9時過ぎ、智実と美桜は宿を後にし、車のトランクへ手荷物を乗せている時だった。
「やあ、次はどこへ行くのです?」
二人へ向け、声がかかった。
振り返ると、利根沢がいたのだ。
ランニングシャツにバミューダパンツの出で立ちで、でっぷりと突き出た腹をなでながら、近寄ってくる。
昨日の浴場での出来事が男を気安くさせたのだろうか。
皮ズボンに白ブラウスの智実、Tシャツにミニスカートの美桜を舐めるように見ながら、
着衣越しに彼女たちの裸身を今一度目に浮かべていた。
特に美桜の表情は曇った。
(智実さんのテンションに釣られたとしても、なんで昨日あんな事をしたのだろう?ああ…。)
浴場での後悔を消化できずに、胸に持て余しているのだ。
「そろそろ連休も終わりだからさ。あとは帰るだけさ!」
智実がそう言っている間も、利根沢の表情は緩みっぱなしであった。
やはり、自身が姦淫した女二人が同時に目の前にいたのであれば、男は心地よい充足感がある。
「あ、そうそう。ここで会ったのも何かの縁でしょう…。一枚写真でもお願できます?」
彼は首に下げていた、デジカメを手にした。
「構わないさ。なぁ、美桜。」
ちょうどチェックアウトする宿泊客が近くにいた事もあり、利根沢を真ん中に左右に智実と美桜が立ち並んだ。
それほど長身ではない彼は、二人と肩を並べながら手をくびれた腰に回し、不細工な顔で目一杯の笑みを作ったのだ。
シャッター音が鳴った。
「ありがとうございます。」
気をきかせ、先に智実がカメラを受け取り、利根沢へ手渡そうとした。
が、その時であった。
彼は手元を操ると、傍らにいた美桜の乳房を揉んだのだ。
どさくさに紛れ、背後から回したてが胸に伸び、ずんむりッ…とTシャツ越しに柔肉へ沈んだ。
「きゃッ!」
驚いた美桜は、まるで乙女のような悲鳴を発したのだ。
「むふふふ…。びっくりしました?」
その後も、利根沢は掌を鼻にあて、くんくんと匂いを嗅いだ。
うっすらと滲んだ汗とフェロモンの香り。
それが男を一層上機嫌にさせると、最後に礼をいい、彼は立ち去った。
「もう、サイテー!」
車に乗り込んだと、同時に美桜は不快をあらわにする。
しかし、智実の視線は、にわかに笑っているではないか。
「な…何ですか?」
むくれた表情を寄こすも、智実の目は美桜の太腿へと向くのだ。
「派手に中出しされたヤツが、乳揉まれたくらいで騒ぐんじゃねェよ!へへへ…。」
その言葉に赤くなったのは、美桜であった。
「き、昨日のアレはハプニングなんです!」
智実の視線を弾くように、両手で股間を覆った。
「私、もっとカタイ女なんですから…!もう!」
「カタイから抜けなかったんだろ?」
「違います!だ・か・ら…。」
智実は美桜の小言を聞き流しながら、車のアクセルをグッと踏み込んだ。


完。

                                                                     

     もくじ(7)