「な〜んだ、誰もいないや…。」
海岸に辿り着いた太一は、多少拍子ぬけした表情で辺りを見回していた。
「もしかすると、旅館の前だし…旅館の私有地なのですかね?」
真が首をかしげるが、太一は「そうじゃないってば!」と癇癪気味に言い返した。
「てっきり水着を着たお姉さんがいると思ったのに…!あ〜あ!」
太一のその言葉を聞いて「太一らしいや!」と、順平が笑った。
彼がクラスの女子のスカートをめくり、総スカンをくっている事を思いだしたのだ。
男子連中は面白半分ではやしたてていたが、女子の身になれば迷惑際なりない行為である。
「なんだ?お前たち興味ないのかよ!こ〜んなボインのレディがおっぱいを揺らしながら歩いてるんだぜ!」
太一は両手を胸の前で張り出すような仕草を交えて言う。
「それなら、僕、見つけたよ…!」
「どこに!?」
順平の言葉に、まるで条件反射のように太一は反応した。
すると、順平は再び、あははは…!と笑い、
「見つけたって言っても雑誌だけどね!」と答えた。
「あっち!」
彼は来る途中にあった茂みの方を指差した。
するとそこには言葉通り、アダルト雑誌が2冊、クシャクシャになりながら転がっていた。
おそらく、久しい間この場所に放置され、何度か雨に打たれながら乾燥された、果ての姿なのだろう。
「こんな物を見つけるなんて順平も、スケベなところあるじゃないか!?」
太一は息を荒げていた。
「嫌いじゃないけど…。」
そう言いながら、順平は辺りを注意深く見まわすのだ。
「でも、こんなところ、大人の人に見つかったらマズイよ!」
しかし、太一は他の二人にも座るように促すのだ。
「3人で囲んでいれば、見つからないって!」
子供ならではの安易な考えだが、みな同調したように頷いた。
「いくぞ!」
ページを開くと、パリパリと硬くなった紙の歪む音がする。
と、いきなり見開き一杯に裸の女性が現れたではないか。
ソファに横たえながら、乳房はモロ出し、あられもなく股間に掌をかざし、秘部を覆い隠している。
ゴクリと唾を飲み込む音が同じタイミングで鳴ったような気がした。
「順平、もうチンチン起っちゃただろ!?へへ…!」
ひやかすような口調で太一が言うのだ。
「いいだろ!そんな事、太一に関係ないじゃないか!?」
「はは…ッ!恥ずかしがってやんの!」
さすがに、順平も赤面しながらやや怒った表情を向けた。
次のページをめくると、今度は突き出したヒップが目に飛び込んできた。
モデルの女性は、股の間から覗きこみ、カメラへ視線を寄こしながら、右手は乳房を掴み、左手は股間を覆っているのだ。
「ああ、まただ!大事な場所が見えない!」
太一は女性が股間を隠している事を残念そうに嘆いた。
「バカ!日本の法律で、そんな所は見せられないのです!」
真が呆れたように太一を見るのだ。
「そんな事わかってるよ…!でも、もしかしたら、指の隙間とかから見えたりするかもしれないだろ!?」
次のページをめくると、今度は女性と男性が互いの股間を擦り合わせている画であった。
結合部はボカシてあり、またもや太一の期待は空を切る格好となった。
次のページもその次も、一番大事な場所を見る事は出来なかった。
しかし、子供たちは1ページごとにお祭りのような喝采をあけていた。
女性が男性器をくわえている場面など、特にそうであった。
「こんなモノ美味しいわけ無いのに!」と言った声が満場一致であったのだ。
最後の方のページは順平には不可解であった。
女性の身体におびただしい量の白濁の液がかかってい、彼女は恍惚とした表情で横たえているのだ。
少年たちは、2冊の雑誌を丹念に開いては、興奮を共有し、あるいは疑問を自身の中でくすぶらせ、首を傾げていた。
どれくらいの時間が経っただろう。
陽が傾き、水平線の彼方は紅く染まりかけていた。
少年たちの周辺が次第に暗くなりかけ、その時、ようやく真が気付いたのだ。
「ああ、夕飯までに帰らないと!」
その声に二人も我に返った。
そうだ、自分たちは今、温泉旅行に来ているのだ。
慌てて3人はその場を離れ、宿へと向かった。
その時、太一が言った一言が順平の耳から離れなかった。
「女の人ってみんな股間を隠していただろ?」
「うん…。」
「アソコにおチンチンが入るんだぜ!」
とりあえず順平は頷いてしまったが、そんな事をして一体どんな意味があるのか、皆目見当もつかなかった。